卵とコレステロールの話
広島県庄原市で採卵養鶏場を営んでいます、有限会社グリーンファームです。
今年は卯年なので、ウサギにまつわる話をしたいと思います!
「卵は1日1個まで」とか、「卵を食べすぎるとコレステロールの摂りすぎになる」といったことは、現在はあまり聞かなくなっているかもしれません。
そもそも卵⇒コレステロール⇒悪の誤解の始まりは1913年、コレステロールが人間に与える影響を調べるため、ロシアのNikolai N. Anitschkow氏らがウサギを用いて行った実験がきっかけだと言われています。ウサギに卵黄から抽出したコレステロールを与えると、人間の動脈硬化と同じ症状が現れたことから、動脈硬化の原因はコレステロールだと突き止めました。動脈硬化の原因が老化によるものだと考えられていた当時では驚くべき発見だったようです。(Anitschkow NN et al., 1913, Steinberg D, 2013)
しかしながら、「卵黄(卵)を与える(食べる)と動脈硬化になる」という部分だけが広まり、卵はコレステロール値が上がって、動脈硬化を引き起こす原因になる、という考えが定着してしまったようです。
ウサギは草食動物なので、普段摂取しない動物性の脂肪を含む卵を食べさせればコレステロールが増加するのは当たり前です。人間は雑食性で動物性の食品もたくさん食べますが、常にコレステロールが増えるわけではありません。
その後、卵の摂取量と動脈硬化性疾患の発症リスクとの関連はないという論文が多数報告されています。日本でも人体とコレステロールに関する実験結果が発表され、卵のコレステロールを多く摂っても血中コレステロールの値は殆ど変化しないことがわかっています。
食物に含まれたコレステロールは、小腸で吸収され、肝臓に運ばれます。肝臓では人間に必要なコレステロールの量を判断し、足りない分は自ら合成します。したがって食物から摂るコレステロールが多少多くなっても、自ら合成する量を減らし、いつも一定量を保つように調整されているのです。(タマゴ科学研究会「タマゴとコレステロール ― 科学的根拠に基づいた知見 ―」)
草食動物であるウサギは、このような調節機能を持っていないので、コレステロールを与えただけ血中コレステロール値が上がってしまうというわけですね。
一方で、脂質の代謝がうまくいかない、上記の調整機能が働かなくなってしまった患者さんの場合は、脂質を含む卵の摂取量はしっかりと考える必要がありますので、ご注意ください。
卵は『完全栄養食』とも言われるくらい栄養バランスが良く、コストパフォーマンスに優れた食材です☆毎日の食事に、上手に取り入れていきましょう!